そこに思い出があるから そこに思い出があるから
爪を切っていなかった。ぼくは爪を短く、常に切っていなければならなかった。それを怠った。
ぼくはいつでも、どんなときでもギターを弾けなければならない。ギターを弾けないぼくはぼくじゃない。そう思わなくなったらなにか、あの頃というか、自分のなかにいる誰か、違う自分というか、そういう自分に申し訳すらたたないのである。アルペジオ、オクターヴ奏法、スライドワーク。チョッピング。
ギター弾きという人間における、ギターにたいする偏屈な愛情や固執、負けず嫌いな心。主張する心。意味を理由を価値を道理を、何もかもを帰結させようとする研ぎ澄まされた鋭い、何にも傷つけられない無敵の魂。
それがぼくを責める。お前はどうしてしまったのかと。
※この文章は、酔っぱらいながら帰路の電車で書いた。たまたまいった飲み屋でギターがあって、さわらせてもらった日に。